建設・住宅分野の記事制作では、「一次情報を入れる」という言葉がよく使われます。ところが、実際に制作の場で話をしてみると、何を一次情報と呼ぶのか、発注者側とライター側で認識がそろっていないことが少なくありません。「施工事例の写真があれば十分」と考える方もいれば、「専門家に監修してもらえば一次情報になる」と考える方もいます。今回は、建設会社の記事における一次情報の線引きと、建設会社に眠っている素材の種類についてお伝えします。
このページで分かること
- 建設の記事で「一次情報」と「二次情報」を分ける判断軸
- 建設会社に眠っている一次情報の主な種類
- 写真や失敗談を、記事に使える素材にするときの注意点
- 一次情報が薄い記事に共通して見られる特徴
一次情報と二次情報を分ける、ひとつの問い
建設の記事で一次情報かどうかを見分けるときは、次の問いを使うのが分かりやすいと考えています。
「その会社の現場や業務に関わっていなければ、書けない内容か」
たとえば、法令の内容、工法の一般的な解説、メーカーが公開している仕様、補助金制度の概要などは、調べれば誰でも書けます。これらは正確であることが大切な情報ですが、一次情報ではなく二次情報です。一方で、「この条件の現場では、実際にこの工法を選んだ」「見積もりの段階で、お客様からこの質問が出た」といった内容は、その現場に関わった人にしか書けません。後者が、一次情報です。
ここで誤解されやすいのは、二次情報が不要だということではない点です。法令や制度の正確な説明は、記事の土台として欠かせません。ただ、土台だけで記事が終わってしまうと、競合他社の記事と同じ内容になります。土台の上に、その会社にしか書けない部分をどれだけ載せられるか。ここが、記事の差になると考えています。
建設会社に眠っている一次情報の種類
建設の現場や営業の業務の中には、記事の素材になるものが数多くあります。ここでは、記事づくりの場面でよく使える種類を整理します。素材をどこから拾い上げるかについては、別のコラムでお伝えしているので、あわせてご覧ください。
①現場写真・施工中の写真
完成後の写真は、他社も用意できる情報です。一次情報として価値が出やすいのは、施工の途中の写真です。下地の状態、配筋や躯体の様子、仕上がると見えなくなる部分など、完成してからでは確認できない情報は、施主や発注者にとって「この会社はどんな仕事をするのか」を知る材料になります。
②施工記録・日報に残っている数値や条件
工期、工程の組み方、天候による調整、使用した資材の種類など、日々の記録に残っている具体的な数値や条件は、記事に説得力を与えます。現場管理の業務では、写真や記録を残すこと自体が日常の仕事の一部です。記録は「すでにある」ことが多いので、記事の素材として整理し直すだけで使える場合があります。
③手戻り・想定外・失敗への対応
一般的な解説記事には、うまくいった工程の説明が並びます。そのため、「想定と違った状況が起きたとき、どう判断して対応したか」という内容は、それだけで希少な情報になります。施主や発注者が知りたいのは、順調なときの手順よりも、トラブルが起きたときに会社がどう動くかであることが多いと感じます。
④判断の理由
「なぜその工法を選んだのか」「なぜその材料にしたのか」といった判断の理由は、結果よりも価値のある情報になることがあります。同じ結論でも、背景にある条件や比較した選択肢が書かれていれば、読者は自分のケースに置き換えて考えられるからです。ベテランの担当者にとって当たり前の判断基準ほど、記事にすると新鮮に読まれます。
⑤お客様とのやり取りの中で出た質問や不安
商談や現場でお客様から繰り返し聞かれる質問は、検索する人が抱えている疑問と近いことが多く、記事の見出しや構成を決める手がかりになります。
素材を「記事に使える形」にするときの注意点
写真は「あるだけ」では一次情報にならない
写真は、それだけでは情報として弱いままです。いつ、どこで、どんな条件の現場で、何を目的に撮った写真なのか。この4点が添えられて初めて、読者にとって意味のある情報になります。「施工中の様子」というキャプションと、「築年数の経った木造住宅で、既存の下地を確認した段階」というキャプションでは、読者が受け取る情報量がまったく違います。
守秘と個人情報の確認を先に行う
建設の素材には、公開できないものが含まれていることがあります。施主様の個人情報、住所が特定できる写り込み、元請や取引先の情報、契約上公開が制限されている現場などです。素材を渡す前に、公開してよい範囲を確認することが欠かせません。この確認を後回しにすると、記事が完成してから使えなくなる事態になりかねません。場所や名称をぼかしても、記事の価値が大きく損なわれないよう、「条件」や「判断」の部分を中心に素材を整理しておくと進めやすくなります。
失敗談は「原因・判断・対応・今の基準」の順で整理する
失敗や想定外の話は、そのまま書くと言い訳や自慢話に読まれてしまうことがあります。原因は何だったのか、その場でどう判断したのか、どう対応したのか、そして今はどういう基準で進めているのか。この順に整理すると、読者が自社に置き換えて学べる内容になります。責任の所在を追及するような書き方は避け、あくまで「判断の記録」として扱うのがポイントです。
一次情報が薄い記事に共通して見られる特徴
TEXTYLEでは、建設・住宅分野の複数のテーマの記事を、コンテンツ診断ツールで試験的に確認してきました。検証した範囲では、一次情報の深さと、経験や専門性といった信頼性のシグナルが、最も弱く出やすい項目でした。個別の記事に共通して見られた特徴を、次のように整理できます。
- 解説が一般論で終わり、「当社では」「この現場では」という視点が出てこない
- 数値や条件の記載がなく、どの現場にも当てはまる書き方になっている
- 写真がフリー素材で、実際の施工や担当者の様子が見えない
- うまくいった話ばかりで、判断に迷った場面や想定外の対応が出てこない
なお、一次情報を入れたからといって、検索順位が上がることが保証されるわけではありません。ただ、同じテーマで書かれた記事が並ぶ検索結果の中で、読者が「この会社に相談したい」と感じる材料になるのは、その会社にしか書けない部分だと考えています。
素材は完成していなくていい
ここまで挙げた素材は、きれいな文章に整えて提供していただく必要はありません。ライターやディレクターに渡すときは、次のような箇条書きのメモで十分です。
- どんな現場・案件か(種類、規模、築年数などの条件)
- いつ頃の話か
- 何が起きたか、何を判断したか
- なぜそう判断したか
- 今はどうしているか
この5点が残っていれば、記事の構成に落とし込む作業はディレクター側で担えます。発注者側に求められるのは、完成された原稿ではなく、現場にあった事実の断片です。外注ライターの見極め方や、発注者側の役割については、外注ライターの見極め方のコラムでも触れています。
御社の中にある一次情報を、記事の素材に整理するご相談はこちら
「何が記事に使える素材なのか分からない」という段階でも構いません。まずは現状の記事や、お手元にある記録の状況をお聞かせください。
メールで相談するよくある質問
専門家に監修してもらえば、一次情報になりますか?
監修は、記事内容の正確性を担保するうえで有効ですが、それだけでは一次情報にはなりません。一次情報とは、その会社の現場や業務に関わっていなければ書けない内容を指します。監修と、自社の実例や判断の記載は、役割が異なるものとして考えるのがよいと思います。
施工事例の完成写真だけでは足りませんか?
完成写真は有効な素材のひとつですが、他社も用意しやすい情報です。施工中の写真や、現場の条件・判断の理由を添えることで、その会社にしか出せない情報になります。
失敗談を記事に載せるのは、会社の評価を下げませんか?
書き方次第です。原因・判断・対応・今の基準という順で整理し、責任の追及ではなく判断の記録として載せれば、読者にとっては「トラブル時にどう動く会社か」を知る材料になります。公開してよい範囲は、事前に確認しておくことをおすすめします。
守秘義務があり、現場の詳細を出せない場合はどうすればよいですか?
場所や施主様が特定される情報を伏せても、現場の条件、判断の理由、対応の考え方は記事にできることが多くあります。公開できる範囲を先に確認したうえで、その範囲内で使える素材を整理していきます。
