工務店・建設会社様のサイトには、ほぼ必ず「施工事例」のページがあります。ところが、中身を拝見すると、完成写真が並び、「外壁塗装工事」「新築戸建て」といった短いキャプションが付いているだけ、というケースが少なくありません。写真は丁寧に撮られているのに、問い合わせにつながらない。施工事例が問い合わせにつながらない理由のひとつは、施主が施工事例を「見て楽しむ」ためではなく、「会社を比較する」ために見られていることとのズレです。今回は、施主が比較に使える施工事例ページの作り方についてお伝えします。

このページで分かること

  • 施主が施工事例から読み取ろうとしていること
  • 完成写真だけの事例が、比較材料にならない理由
  • 比較に使える施工事例の5つの構成要素
  • 事例が少ない・公開に制限がある場合の考え方

施主は施工事例を「比較」に使っている

施主は工務店を選ぶ前に何を見ているかのコラムで、施主は契約までの数ヶ月間、複数の会社を見比べながら不安を抱えて検討していることをお伝えしました。この「比較される期間」に、施主が施工事例から読み取ろうとしているのは、おおむね次の3点だと思います。

  • 自分の状況に近い条件の事例があるか
  • 工事の途中や、想定外のことが起きたときに、どう進めてくれる会社か
  • 費用や工期の感覚が、自分の想定と合っているか

完成写真は、仕上がりの好みを判断する材料にはなります。ただ、この3点には答えてくれません。施主が知りたいのは「きれいに仕上がったか」だけでなく、「自分が頼んだら、どういう流れで、どうなるのか」だからです。

完成写真だけの事例が、比較材料にならない理由

完成写真だけの事例には、比較の場面で3つの弱さがあります。

1つ目は、他社の事例と並べたときに、違いが「写真の好み」しか残らないことです。完成後の写真は、どの会社も用意できる情報です。2つ目は、条件が分からないため、施主が自分のケースに置き換えられないことです。築年数や建物の状態、敷地の条件が分からない事例は、「うちの場合はどうなのか」を判断する材料になりません。3つ目は、費用・工期・対応といった施主の不安に答えていないことです。きれいな写真を見て「いいな」と思っても、不安が残ったままでは、問い合わせの一歩は踏み出しにくくなります。

比較材料になる施工事例の5つの構成要素

完成写真は残したまま、次の5つを加えると、事例は比較材料に変わります。すべてを一度に揃える必要はなく、まず1件の事例で試していくのが現実的です。

①施主の状況と、きっかけ

どんな建物で、何がきっかけで工事を検討されたのか。築年数、建物の種類、きっかけ(劣化が気になった、寒さが気になった、家族構成が変わったなど)を書きます。読者は自分に近い状況の事例を探しているので、事例のタイトルや見出しに条件が入っていると、「これは自分に近い」と気づいてもらいやすくなります。施主様が特定される情報は載せません。

②現場の条件と、選んだ方法の理由

「なぜその工法・材料を選んだのか」は、その会社の考え方が最も表れる部分です。同じ工事でも、現場の条件によって選ぶ方法は変わります。条件と判断の理由を書くことは、施主にとって「この会社は、状況を見て判断してくれる」という安心材料になり、記事としても、その会社にしか書けない部分になります。こうした素材の考え方は、建設会社の「一次情報」とは何かのコラムでも整理しています。

③施工中の写真と、工程の流れ

完成後には見えなくなる部分の写真は、施主にとって「見えないところでも、きちんと仕事をする会社か」を判断する材料になります。写真には、いつ、どこで、何の工程かを添えます。着工から完了までの流れが分かると、施主は「自分が頼んだ場合の進み方」をイメージしやすくなります。

④工期と費用の目安

費用や工期は、施主が最も知りたい情報のひとつであり、載せていない事例が多い部分でもあります。正確な金額を出しにくい場合でも、工事の規模に対する目安や、金額が変わる要因(建物の状態、工事範囲、材料の選択など)を書くことはできます。載せる数字は、実際の契約内容と一致している必要があります。出せない場合は、「条件によって変わるため、現地確認後にお見積もりします」と、その理由を添えるだけでも、何も書かないよりは誠実な印象になります。

⑤完成後の様子と、担当者のコメント

工事が終わった後、施主がどう感じているか。そして、担当者が現場で何を考えていたか。施主の声は、掲載の承諾をいただいたものだけを、言葉を整えすぎずに載せます。担当者のコメントでは、うまくいったことだけでなく、工事の中で判断に迷った点や、想定と違った点への対応も書けると、「何かあったときに、この会社はどう動くのか」という施主の問いに答える内容になります。

事例が少ない・公開に制限がある場合

「そもそも事例の件数が少ない」「守秘の関係で出せない現場が多い」という会社様も少なくありません。その場合は、件数を増やすことより、1件の中身を深くすることを優先するのがよいと考えています。条件が違う事例を1件ずつ、判断の理由と工程まで含めて丁寧に掲載したほうが、写真だけの事例が10件並んでいるよりも、比較の場面では役に立ちます。

公開に制限がある場合は、場所や施主様が特定できる情報を伏せたうえで、現場の条件、判断の理由、工程の流れを中心に書く方法があります。また、今後の事例のために、契約時や引き渡し時に、掲載の可否を確認する流れを作っておくと、後から使える素材が増えていきます。

施工事例ページで陥りやすい落とし穴

1つ目は、件数だけを増やして、どの事例も同じ構成・同じ文面になってしまうことです。条件や判断が書かれていない事例は、数が増えても比較材料にはなりません。2つ目は、施主の声を、読みやすさのために大きく書き換えてしまうことです。整えすぎた声は、かえって作られたものに見えます。3つ目は、一覧ページが写真とタイトルだけになっていることです。一覧の段階で、建物の種類や工事内容、条件が分かると、読者は自分に近い事例を選びやすくなります。

なお、事例を充実させたからといって、問い合わせが増えることが保証されるわけではありません。ただ、地域名キーワードで上位表示されているのに反響が来ないというズレがある場合、施工事例ページは、検索から訪れた人が「この会社に相談したい」と判断する受け皿になる部分だと考えています。

1件の事例を作るための、素材メモ

事例の素材は、整った文章でなくて構いません。次のような箇条書きのメモがあれば、記事の構成に落とし込む作業はディレクター側で担えます。

  • どんな建物・状況で、何がきっかけの工事だったか
  • 現場の条件と、選んだ方法、その理由
  • 施工中の写真(いつ・どこ・何の工程か)
  • 工期と、費用の目安(実際の内容に基づくもの)
  • 完成後の様子、施主様の声(掲載の承諾があるもの)
  • 担当者が判断に迷った点、想定と違った点

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「事例はあるが、どこから手を付ければよいか分からない」という段階でも構いません。まずは現状の事例ページと、お手元にある記録の状況をお聞かせください。

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よくある質問

施工事例は、何件くらい載せればよいですか?

件数に決まった目安はありません。まずは1件を、条件・判断の理由・工程まで含めて丁寧に作り、その後、工事の種類や条件の違う事例を少しずつ増やしていくのがおすすめです。

費用を載せると、他社と比較されて不利になりませんか?

載せなくても比較は行われます。費用が分からないままだと、問い合わせる前に候補から外れてしまうこともあります。条件付きの目安として載せ、金額が変わる要因をあわせて書くことで、納得感のある情報になります。載せるかどうかは、会社の方針に合わせて判断してください。

施主の声は、どうやって集めればよいですか?

引き渡しのタイミングで、掲載してよいかを確認し、簡単なアンケート形式でお聞きする方法があります。無理に集める必要はなく、いただいた言葉をそのまま使うほうが、読者には伝わります。

古い事例は、削除したほうがよいですか?

条件や判断の記録としての価値は残るため、削除は必須ではありません。ただし、現在の工法や価格の考え方と異なる点がある場合は、その旨を注記するか、更新日を明記しておくと誤解を防げます。